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地獄命令

 

片岡千恵蔵御大主演の東映ギャング映画

劇中ではヤクザと言っているが、後の任侠風のイメージは薄く、アメリカ映画のギャングに近い。

着流し姿のやや古風なヤクザの親分の一面も演じているのは南原宏治さんだけで、安部徹さんなどはヤクザと言う感じすらない。

御大もソフト帽にスーツと云った多羅尾伴内のような古風な出で立ちで、任侠道とはかけ離れたイメージ。

その片岡千恵蔵扮する主人公は、膨大な子分を率いるヤクザの大物ながら、義理人情よりも金銭欲などが旺盛なドライな大物に描いてあるため、今ひとつ感情移入しにくい展開になっている。

ラストでようやく改心するのだが、冒頭から、頑固一徹で金のことばかりに執着する俗物キャラとして描かれている上に、御大映画にありがちなユーモアがほとんどないので、御大なんだから心底悪いはずがない…と言う観客側の思い込みで御大を見守って行くしかない展開になっている。

何故、当時、こうしたギャング映画や暗黒街ものが作られたかと考えると、もちろんアメリカ映画や海外TVドラマの影響なのだろうが、日本で銃撃戦の見せ場を作るには、どうしてもヤクザとかギャングを登場させるしかなかったと言う事情もあったのではないかと思う。

千葉真一、梅宮辰夫と云った当時の若手も登場しているが、全員まだイケメン風な青年ばかりなので、役柄も限定されている。

千葉真一さんは真剣祐さんに良く似た美少年風なので学生役。

少し体格的に貫禄がついて来た梅宮辰夫さんは頭の切れるヤクザの右腕役。

この時期の作品では、同じ若手のように見えても映画デビューが早い江原真二郎さんの方が重要な役を演じている。

出来は可もなく不可もなくと言った所ではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1964年、東映、松浦健郎原作+脚色、 村尾昭脚色、小沢茂弘監督作品。

鞍馬などの設備があるスポーツセンターの奥の事務所にやって来た子分(曽根晴美)が、中丸徹平(安部徹)の前に来ると、壁に貼られた地図を前に、社長!今度電車が通る予定の錦ヶ丘地区を大松の野郎が買い占めやがった!と指差し報告する。

1億じゃ足りなかったのか!と、同じ場所を買おうとしていた中丸が驚くと、相手は桁が違った!と子分は無念そうに言う。 勝負に負けたと知った中丸は、中丸徹平の意地にかけて取り戻してみせるぜ!と息巻く。

同じ頃、仲間を集めた席で、大松正道(片岡千恵蔵)は、新東京電鉄の話を聞いた時、これはチャンスだと思って、有り金全部つぎ込んで買ったんだ!と自慢話をしていた。

電車が通れば2~3年でニュータウンに人が集まるようになる。 大松会2千人の夢のため、勝負するんだ!と大松は張り切る。

タイトル

足立家の二階の部屋ではレオタード姿の礼子(本間千代子)がダンスのレッスンをしていた。

1階の居間で妻良子(不忍郷子)に、玲子の恋人はできた気配か?などと話しかけていたのは主人の友十郎(十朱久雄)だった。 そんな足立邸の勝手口の外から、電気料の集金です!と声がしたので、今月は早いわね…と不思議がりながら女中がドアを開けると、入って来たのは、集金人の格好をした見知らぬ3人の男(山本麟一)たちで、拳銃を突きつけると、悲鳴を上げかけた女中の口にガムテープを貼り、そのまま居間に連れて行く。

突然の侵入者に驚き、警察に電話をしようとした友十郎だったが、すぐさま電話線を切断されてしまう。

サツとは相性が合わないんでねと賊が言っているのに気づいたもう一人の女中は、別の裏口から逃げ出そうとするが、そこに入って来たもう一人の賊(潮健児)に見つかり、やはり口にテープを貼られ、居間に連れて行かれる。

金なら全部やる!と友十郎は侵入者たちをなだめようとするが、社長さん、俺たちが欲しいのは金じゃないよと賊のリーダーらしき男が笑いながら言う。

その時、玄関ブザーが鳴ったので、リーダーは、社長、あんたが出るんだ!後ろに気が短いのがいるのを忘れないようになと言いながら、銃を背中に突きつけ友十郎と一緒に玄関に向かう。

すると、玄関から入って来たのはゴルフバッグを肩に背負った雪川(江原真二郎)だったので、何だお前かとリーダーは苦笑し、鍵をかけてないのは不用心だぜと言いながら雪川は上がり込んでくる。

リーダーは友十郎に、残念だったな、こいつは仲間なんだと教え、雪川と2人で二階への階段を戻って行くので、二階だけは行かないでくれ!と友十郎は頼む。

するとリーダーは、俺たちは何より人殺しが好きだってことを忘れねえようになと言うと、側にあった黒田節人形を撃ってみせる。

二階に来た2人は、そこにいた礼子をタンスの中に押し込むと、細川はゴルフバッグから猟銃を取り出し、窓から向かいの屋敷をリーダーとともに見る。 その屋敷こそ大松の家だった。

大松邸では、幹部(神田隆)らを前に、錦ヶ丘ニュータウンにはスーパーマーケットや娯楽センターを作る。

第一次計画工事費は20億だ!と大松が話していたが、川向こうは根津が仕切っている。

根津は社長の娘婿ですぜと幹部は、大松が川向こうまで手を出そうとしていることを案ずる。

すると大松は、中丸も狙っているんだ、工事が終わったら向こうにも知らせてやるさと答える。

奥の座敷では、大松の妻のギン(木暮実千代)が仏壇の前で拝んでいた。

足立邸の二階から大松邸の様子をうかがっていた賊のリーダーは、10時に東京会館で総会が行われるので、そろそろ出発するはずだ。奴には6人のボディーガードが付いていると、猟銃を構えていた雪川に教える。

しかしその直後、大松邸の玄関から出て来たのは、大松の息子信一(千葉真一)だったので、雪川たちは慌てて部屋の中に身を隠す。

信一は、足立邸の二階の部屋に向かって口笛を吹いて礼子を呼び出そうとするが、何度吹いても出て来ないので、諦めて学校へと向かう。

窓からその様子を見送ったリーダーは、オヤジは防弾ガラス付きの高級車に乗っているのに、息子は満員電車なんだなと苦笑する。

その時、雨が降ってくる。

雪川はスコープの中で玄関から出てくる大松の姿を狙っていたが、雨が降って来たことに気づいた幹部が傘をさしかけたので、大松の姿が一瞬見づらくなる。

やむなくそのまま傘越しに撃つが、大松が狙撃されたことに気づいたボディーガードがすぐさま撃ちかえして来る。

そこ河原はすぐに逃げ出すが、大松組のボディーガードたちは足立邸に仲間で侵入して来て、車で逃げ出した狙撃犯たちを撃つ。

逃げ出す賊も撃ちかえし、ボディーガードの数名が倒れる。

逃げ後れた賊の一人は撃たれた後排水溝に落ちて即死。 リーダーも、踏切を越えた所で通過する電車越しに撃たれ絶命する。

その頃、「トシ子美容室」のあるビルの前に車から降り立ったのは虎谷金助(進藤英太郎)だった。

美容室に顔を出し、ハロー!トシ子!と呼びかけられた仕事中の利子(小林裕子)は、金助を見て、お父さん、いつ帰ったの!と驚く。

飛行機が故障しちまって!などと笑顔で答える金助を奥の部屋に連れ込んだ利子は、ミーは、アメリカのテキサスでいつもミーのことが気になっていたなどと言う父に、じゃあ何で2年も頼りをくれなかったの?と聞く。

深い事情があったんだと言う金助に、2年も刑務所に入ってたんじゃ無理でしょうね、下手なお芝居しないでちょうだい、なくなった母さんと同じように黙って騙されてたのよと利子が言うので、じゃあ、3年前から知ってたのか…と金助は愕然とする。

パリに行ったと言ってたときはフランス人形のお土産を持って来てくれた、今度は何?と利子が聞くので、金助は、ばつが悪そうにインディアン人形を取り出す。

他人の罪をかぶって入るなんて…、でもこれから先は身代わりになる必要はないわね、今朝、大松会の親分が撃たれたそうよと利子が言うので、何!大将が!と金助は仰天する。

慈恵大学病院 撃たれた大松の緊急手術が行われていた。 学校から駆けつけた信一が、父さんがいつも暴力ばかりで解決しているからこんなことになるんだと批判すると、手術室の前にいたギンが叱る。

そこに、横浜から駆けつけた長女の愛子(佐久間良子)も合流する。 虎谷も慌てて駆けつけ、贔屓の依田(梅宮辰夫)の顔を見るなり、俺が身代わりに死ねば良かったんだ!と嘆くが、虎さん、まだ親分は死んじゃいない、今、手術中だと教える。

その後、別室に集まっていた幹部たちの前にやって来た依田は、手術は成功しました。

2~3週間後に退院できるそうですと伝え、6人のボディガードの内4人が即死、この連中には葬式代や遺族年金を送りました。

生き残った2名のボディーガードは職務怠慢として処分します。今、殺された4人の狙撃犯を捜していますが、警視庁第四課も動き出しており、武器不法所持の容疑で屋敷内を捜査しています。

今、1人でも動けば全員潰されます。今回の事件の裏には罠が仕掛けられていますとよどみなく説明したので、それを聞いていた幹部は、おめえは頭が良いと聞いていたが、見事な読みだと感心する。

しかし、別の幹部(関山耕司)が、だが親分を撃たれているのに、警察が怖くてヤクザが何もしねえってのはないぜ!と文句を言うと、泣き寝入りはしません。

しかし全員四課の尾行が付いていることを忘れないように!と依田は幹部連中に釘を刺す。

その後、金助は依田と共にバー「マユミ」に付いて行く。 金助はお気に入りの依田に、おめえ、嫁をもらう気はないか?とっても良い娘がいるんだと話しかける。

しかし依田は、虎さんも知っての通り、俺たちの仕事は女房がいたんではできねえと言うので、それは女房になる女次第、何年も待ってくれる女なら大丈夫だ。依田さえその気ならすぐにでも連れてくるぜ!依田、会ってみねえか?と金助がしつこく勧めるので、誰です?と依田が聞くと、それは内緒!と金助はうれしそうに答える。

翌日、午前中は面会謝絶の病室では大松とギンの2人きりだった。

いつも人に囲まれている大松にとって、妻以外の誰もいないと言うのは新鮮な経験のようだった。 ギンがジューサーでリンゴジュースを作って大松に飲ませながら、ねえ、お父さん、今の暮らしから抜け出すことできないかしら?信一と3人で暮らすのよ…、このままだと、お父さんダメになりそうで…、もしもの事があったらと案ずるが、止めろ!と制した大松は、依田を呼べ!と命じる。

ギンに呼ばれて病室に入って来た依田はニュータウンの件での銀行振込に付いててきぱきと報告し始める。 俺を狙った奴はまだ分からねえのか?と大松が聞くと、東京の奴じゃないらしいと答えた依田は、午後から皆さん、面会に見えられますと伝える。

午後、幹部連中や、他の組の親分連中が次々に見舞いにやってくる。

中丸も平然とやって来て、元気そうで何よりなどと笑顔で挨拶するので、やったのは案外おめえ辺りじゃねえか?と大松が冗談めかして答えても、確かにあんたがぽっくり逝けば、得をするのは俺辺りかもな…と中丸も冗談で返す。

その時電話がかかって来たので依田が取る。 電話の内容は、大松を狙撃した相手が分かり、根津組の大賀と井上だったと言う報告だった。 依田はすぐに受話器を大松に渡す。

大松は報告を聞き終わると、内々で話があるんだ、外してくれねえか?と中丸に言うので、中丸とその子分は、何か知らないがよほど重要なことらしいなと笑いながら帰ってゆく。

大松は周囲を固めた幹部連中に、俺を狙ったのは根津の子分だと伝えると、何かの間違いかも知れねえ、相手は娘婿ですぜ?と困惑の声が広がる。

そこに当の根津組4代目根津正夫(南原宏治)と妻の愛子が横浜から見舞いにやって来たので、病室内にいた幹部連中は緊張する。

今回は思いがけないことで…と根津が大松に挨拶すると、言うことはそれだけか?いずれ俺の方から挨拶してやるぜ!と大松が睨みつけ、とにかくお引き取りください!と依田が2人を病室から追い出す。

驚いた愛子は、幹部連中から押し出されるとき、持って来た花束を落として行く。

一方、スポーツジムの奥の自分の事務所に帰って来た中丸は、そこに猟銃を手にした雪川がいたので、ここに来るなと言ってあるだろう?と睨みつけながら、札束を渡す。

雪川は、一宿一飯の恩義は分かっているさと笑うので、その手から猟銃を取ると、弾は入っているのか?と確認すると、銃口を雪川に向け、今度こそ間違いなく大松をしとめるんだ!と睨みつける。

そこへ子分がやって来て、さっき連絡が来て、大松と根津が衝突したそうですと言うので、そのために根津の子分を引き取ったのさ…、今頃義理人情なんて流行らなねえ、打つ手はちゃんと考えてるよと中丸は笑う。

一方、横浜の自宅に戻って来た根戸と愛子は、子分(杉義一)から出迎えられるが、屋敷内には警察が入り込んでおり、銃器不法所持容疑で家宅捜査していると聞き愕然としながらも、東京での義父の対応のことを納得する。

大賀と井上は身内だろう?と刑事から聞かれた根津は、半年前に破門したと答えるが、参考人として署まで来てもらおうか?と言われる。

根津は愛子に、警察から帰ったら、もう一度東京に行ってくると言い残し、刑事とともに家を後にする。

東京では、大松と2人きりになった金助が、大将と暮らして30年になるが、事業か気取るのも良いが、義息子の所まで狙うと言うのは見損なったぜと親友の立場から説教していた。

しかし大松は、おめえはムショ暮らしが長く、目が節穴になっているから現実が見えねえんだと軽くいなす。

そこにやって来た信一が、横浜の義兄さんがオヤジを撃ったんだって?と聞いて来たので、あいつのことは言うな!と大松は叱りつける。

病院の廊下の青電話をかけていた依田は、相手の生き残ったボディガード2人に、お前、根津がやったと知ってるな?知ってて黙ってちゃ格好付かねえんと思ってるな?と意味有りげなことを伝える。

その夜、横浜からまた愛子が1人で病室にやってくる。

根津はどうしてる?と大松が聞くと、まだ警察よ、取り調べが長くかかるらしいわ…と愛子は教え、お父さんんもあの人がやったとは思ってないでしょう?と聞く。

しかし大松は、やってない証拠もない、お前もこの商売のことは知っているだろうが、子分がやったと言うだけでは住まない事があるんだと良いながらも、あの時は怒鳴って悪かった…、お前から謝っておいてくれと言い添える。

泊まって行くんだろ?と大松が聞くと、すぐに帰るわ、あの人が帰ってきてて私がいなかったら…などとのろけて来たので、こいつ!と大松は愛子を叩こうとし、痛たたっ!と胸の傷に響いたので痛がる。

廊下まで見送って来た母親のギンは、あんたには気質の人と結婚して欲しかったわ…と言うので、好きになってしまったんですもの…、住んでいる世界が悪いのね…と愛子も答える。

利子の家に戻った金助は、もうお前も21…と話しかけたので、23よ!と利子は訂正する。

依田ほどの男は2人といないんだと勧めるが、私はヤクザやギャングとは結婚しません!真面目な人を自分で探します!と言うと、洗濯物を持って、道路の向かい側にあるクリーニング屋へ向かう。

その後を追おうと表に出かかった金助は、ちょうど店の前で止まったタクシーから降りてくるマユミと、その車で送って来た依田の姿を目撃する。

依田は車から降りずそのまま去って行ったので、クリーニング屋から出て来た利子はマユミに、今の人彼氏?と聞くと、実はそうなの…とホステスも笑顔で答える。

利子は、去って行ったタクシーを睨みつけている父親に気づき、どうしたの?と声を掛けるが、あの野郎!とぼけやがって…、マダムとできてやがったんだな…、人は見かけに寄らないもんだと嘆く。

その頃、横浜警察署から子分に出迎えられ出て来たのは根津だった。 自宅に帰り着くと、伸び放題になったひげを剃りながら、サツから、くれぐれも身辺を気をつけろと言われたと愛子に話した根津は、くれぐれも短気を起こさないでねと愛子からも注意される。

その後、すぐに仕事の現場に向かうと言い出した根津だったが、子分は、自宅浴室の排水溝の中に隠していた拳銃を取り出す。

根津建設の現場にやって来た根津と子分だったが、資材の陰に隠れて待ち受けていた大松の生き残った2人のボディーガードがいきなり飛び出して発砲してくる。 根津をかばおうとした子分の清水が撃たれる。

ただちに根津の子分も応戦し、撃って来た1人は射殺し、もう1人は生け捕りにする。

どこの身内だ!と根津が生け捕りにした相手を殴りつけると、大松!と吐いたので、良し、来い!とその男を引き連れ、東京の大松の元へやって来ると、大松!いねえのか?この男を返すぜ!と言いながら、連れて来たガードマンの生き残りを出て来た大松の方へと押しやる。

何の真似だ?と大松が睨むと、俺の命を狙ったんだよ、子分が1人死んだよ、あんた、こんな北ねえ真似してまで縄張りが欲しいのか!そっちがその気ならこっちにも覚悟がある!と根津が言うので、生意気な!邪魔ができるならやってみろ!と大松も言い返す。

その頃、信一と足立礼子はボウリングを楽しんでいた。

そんな中、礼子は、あの男だわ!あなたのお父さんを狙った男よ!と言い出す。

雪川だった。

信一と礼子はすぐさま、東京タワーの真下まで雪川を追いかけるが見失ってしまう。

礼子は、確かにあの男よと言う。 横浜の根津家では、撃たれた清水の家に行って来たと愛子が戻ってくる。

ご苦労だった…とねぎらった根津は、散歩しようか?と声をかけ、愛子と連れ立って、港が見える公園に出向く。

ここに来るのは久しぶりだな…と根津は感慨深げに言うが、その時、後ろ向きで歩いて来た女の子が愛子にぶつかったので、追いかけて来た父親が詫びてゆく。

その女の子を愛おしそうに見送った愛子は、楽しそうだわ…、私にはあんな幸せ許されないのね…とつぶやき、すぐ、ごめんなさい…わがままなこと言っちゃって…と詫びる。

すると根津は、謝らなくちゃ行けないのは俺の方だ…、俺と一緒にならなければ普通の家庭が持てたのに…と言うので、あなたと一緒なら私幸せなのよと愛子は答える。

愛子…、俺だってオヤジとは争いたくない…、できるだけ我慢するよと言う。

その夜、バーの個室で待っていた中丸に会いに来たのは依田だった。

大松のオヤジ、カンカンだったらしいな?まさか、奴が右腕と頼むあんたが裏切り者とも気づかねえで…と中丸は笑う。

そんなバーに何も知らない金助がやってくる。

依田は中丸に、俺たちの計画が成功したらフィフティフィフティだぜと要求し、中丸の方も、もちろんさ、この話を持って来たのはあんただ、次のプランも頼むぜと言うと、用意していた札束を依田に渡す。

その金を受け取り個室から出ようとした依田は、金助の姿に気づき、まずい野郎が来てる!と又部屋の中に戻る。

それに気づいたマダムのマユミは、カウンター席に居座っていた金助に一緒に外に出てみない?と誘うが、俺は一度飲み出したら動きたくないんだと金助は聞こうとしない。

それでもしつこくマユミが席を立たせようとするので、俺がここにいるとまずいことがあるらしいな?と金助はカマをかけてみる。 するとマユミは、そんなんじゃないのよ、ちょっと横町の焼き芋が食べたくなったのよなどと言うので、じゃあ買ってやるよと金助が席を立ったので、虎さんって頼りになるわ…とマユミはお世辞を言う。

しかし、店の外に出た金助は、何が焼き芋だ、下手な嘘付きやがって…と言うと、物陰から裏口の方に目をやる。

すると、人目を気にしながらマユミが外へ送り出したのは、依田と中丸たちだった。

それを見た金助は、依田の野郎…と睨みつける。 その夜、横浜の根津組では、子分たちが集まり、根津が大松に仕返しをしないことを責めていた。

根津は、そんな子分たちを前に、俺はもういっぺんだけ、オヤジと話し合ってみようと思う、確かにオヤジは許せねえ、だが、誰かが俺とオヤジを噛み合そうとしているように思えるんだ。 俺も4代目だ、信じてくれ!と子分たちを説得する。

そんな中、屋敷の門から書類筒を投げ込んで行ったのは依田だった。

その筒はすぐに子分によって根津の元に届けられる。

中に入っていたのは、大松が錦ヶ丘ニュータウンの地下に作ろうと計画していた地価賭博場の構想図だった。

それを知った子分たちは、奴ら、ニュータウンを食いもんにしようとしているんだ!といきり立つが、根津は、今夜の所は帰ってくれ!と子分たちに言い聞かす。

子分たちが帰った後、根津は計画図を愛子に見せ、これはおめえのオヤジの計画だ、地下賭博場を作るつもりなんだ。 清潔であるべきニュータウンに、大博打場を作ろうとしているのがオヤジなんだ! 愛子、大松の家に帰ってくれ!と根津は頼むが、愛子は、嫌です!私には帰る家などありませんと拒否する。

俺はお前のオヤジを殺すかもしれねえんだ。これがヤクザの宿命なんだ…、俺は根津組の4代目なんだ!帰れ!帰ってくれ!と根津は頼むが、愛子は、嫌です!嫌!と隣の部屋に逃げ込み泣き出す。

翌日、根津組の子分たちは、麦の荷台に箱を積み屋敷に持ち込んでくる。 中身は銃器だった。

それに気づいた根津は、喧嘩をやりたい奴は俺に盃返してから行け!おめえたちは大事な仕事に行くんだ!この話は俺が付ける!と叱り飛ばす。

錦ヶ丘新土地計画の大看板が立った造成地 子分を率いやって来たのは退院した大松だった。

あそこに電車が走りゃ人が集まるぜ!と愉快そうに言うので、屋敷まで抵当に入れたそうじゃねえかとベテラン幹部若尾昇太(明石潮)が聞く。

そこに、車でやって来たのが根津だと気づいた子分たちはざわめき出す。

大松はうろたえる子分たちに、騒ぐんじゃねえ!相手は1人だ!と叱りつける。 根津は、会長、話したいんだ、ここじゃ具合悪いだろ?と大勢の子分に取り巻かれていることを皮肉る。

近くの林の中には、雪川がゴルフバッグを肩に潜入していた。

人気のない場所に来た根津は、持って来た書類筒から計画書を出してみせ、そりゃ、間違いなくあんたの計画だぜ、どうしてこんな悪どい計画をしたんだ?あんたのやりそうなことだ…と地下賭博場のイメージ図を大松に突き出す。

その図面を見た大松は、きれいごとだけでは生きて行けねえと苦し紛れの言い訳するので、新しい町まで汚すつもりか!と怒った根津は拳銃を取り出す。 そこに、愛子が駆けつけてくる。

俺はハジキは持ってねえぜと大松が言うと、仕方なさそうに、根津は自分が持っていたもう1丁の拳銃を放り投げ、拾って構えろ!男らしく勝負しろ!と命じる。

大松は、やむを得ん…と言うと、拳銃を拾い上げる。

そんな大松を狙っていた雪川がライフルの引き金を引いた時、止めて!と言いながら、父親に飛びついて来た愛子の背中に命中してしまう。

そこに子分たちが駆け寄って来たので、追え!山だ!と命じた大松は、倒れた娘を抱き上げ、愛子!しっかりしろ!と呼びかける。

お父さん…、あなた…、争いいは止めて…、お願い…とつぶやいた愛子は事切れる。

しかし、その愛子を抱きしめようとした大松を押しのけた根津は、触るんじゃねえ!愛子は俺の女房だ!と叫び、愛子を抱きしめる。

俺たちがお前を殺したんだ!俺はお前の死を決して無駄にはしないぞ!2人で家に帰ろう…と愛子に話しかけた根津は、愛子の身体を抱き上げ、大松の子分たちの間をすり抜け帰ってゆく。

その後ろ姿を呆然と見送る大松と子分たち。 あなたには何て言ったら良いのか…、愛子の通夜にやって来たギンが根津に同情すると、私は愛子に感謝しています。

根津組の看板を下ろす決心をしましたと根津が答えたのでl僕も今日限り、大松の家を出るつもりです!と一緒に来ていた信一も言い出す。

母さん、これ以上、オヤジの犠牲になるのは止めよう、何でもオヤジの言いなりになって不幸になるだけじゃないかと信一はギンを説得し、それを聞いていた根津も、良かったらここで暮らしませんか?と勧める。

大松の屋敷には、幹部たちが周囲を守る中、大松に愛子事件のことで刑事が事情聴取に来ていたが、知らねえことを何と言えば良いんだ!と大松は癇癪を起こすだけなので、刑事たちも諦め帰ってゆく。

そこに続々子分衆が集まって来て、根津が組を解散すると言ってますと報告する。

愛子を撃ったのはライフルだ。中丸の仕業に違いねえ、愛子を撃った奴を許しちゃおけねえ! どうやらライフルはゴルフバッグの中に入れているらしい。

中丸の仲間内を探せ!と命じる。 そこへ遅れてやって来た依田は、大松と2人にきりになるとばつが悪そうに立ち去ってゆく。

その後、中丸に電話を入れた依田は、大松が必死に雪川を探し始めたと密告したので、分かった、九州へ飛ばそうと答えた中丸は、事務所内にいた雪川に、早くずらかるんだ!その内呼び戻してやるぜと命じる。

自宅に帰って来た信一は、お母さんと僕はこの家を出ます!お父さんの世話になるよりましです!お父さんの世界が姉さんを殺したんだ。人並みに涙を流せないんですか?人並みの幸せを考えたことはありますか?いつも人に囲まれているのは、1人では怖いからでしょう!と言い放ったので、貴様!と怒った大松は信一を殴りつける。

もう2度とこの家には戻りません!と言うと、信一はギンを連れ部屋を後にする。

そこにやって来た金助は、どこに行くんだ?と信一とギンに聞く。

虎谷さん、あの人をよろしくお願いしますと頭を下げて来たギンの言葉で事情を知ると、大松の部屋に入り、あの2人にこんな思いまでさせて…、大将、どう言うつもりなんだ!と文句を言うと、依田!一緒に来い!虎!お前も来るんだ!と大松は2人を連れ出かける。

大松が向かったのは、スポーツジムの奥にある中丸の事務所だった。 今日は折り入ってあんたに相談があるんだ、取引しねえか?と大松は中丸に話しかける。

すると中丸は、2億5000万出そうじゃないか…、3億じゃどうだ?と言うので、何か勘違いしてるんじゃねえか?俺が取引したいのは土地じゃねえ、犬だよ…、心当たりないかい?そのイヌってのはこいつだ!と言うと、横に立っていた依田を中丸の方へ突き飛ばす。

汚ねえぞ、依田!おとなしくしろ!バー「マユミ」で会っている所を俺は見てるんでえ!と金助が怒鳴りつけ、これを開けてみろ!と大松は書類筒を投げつける。

根津に送ったニュータウンの計画写真だ!これは誰も知らねえ、知ってるのは俺をお前だけだ!と指摘した大松は、生き残ったボディガードを前に出すと、根津にばらせと言ったのは誰だ?と聞く。

依田さんですとボディガードが答えたので、これでもまだしらを切るのか?と大松は、依田を睨みつける。 分かったよ…と観念した依田に、お前もヤクザの端くれなら、往生際はきれいにしろ! 1度目は俺に、2度目は愛子に鉛の弾を撃ち込んだ奴の名前を言え!後ろで操っているいる奴もいるはずだ!言え!と大松は迫る。

その時、さりげなく机の引き出しを開け、その中から銃を取り出した中丸は、いきなり依田を射殺し、ふてえ奴だ!と吐き捨てると、あんたの代わりに俺がけりをつけてやったよとうそぶく。

貴様!おい中丸!依田の口からおめえの名が出るのを恐れて消したな?と大松が睨みつけると、聞いたらどうでい?と中丸はとぼける。

すでに床に倒れた依田は死んでいた。 良し!このけりはいつか付けよう!覚悟してろよ!と大松は言い、中丸も良いとも!と答えたので、大松は帰ってゆく。

その後、地下室へやって来た中丸は、そこに身を隠していた雪川に、2人に案内させるからすぐ出て行ってくれ!と子分(八名信夫、曽根晴美)を指して命じる。

お前さん、俺を消すつもりだな?と雪川が気づくと、ここにいてもらっちゃ困るんだと中丸が言うので、良し!明日の朝までに消えるよと雪川は苦笑しながら答える。

大松の奴、おめえだけを手がかりにしてるんだと中丸は言う。

一方自宅に戻って来た大松は、何としてでも撃った奴を探し出してくれ、そうでなきゃ、愛子が浮かばれねえ!と金助に頼むので、まだ意地を張っているのか?皆の気持ちが分からねえのか?と金助は責める。

虎!おめえ、娘亡くして泣かない親があると思うか?俺だって時が来りゃ泣いてやるぜ!と大松が言うので、俺も馬鹿だが、おめえもバカだ!と金助は泣き出す。

俺も人並みの親になりてえよ…、虎!こんな俺に愛想尽きたか?と大松が問いかけると、俺が出て行ったらお前さんの身代わりになるものがあるか?と金助は涙ながらに答える。

東京駅 大松の子分たちはゴルフバッグを持った男を捜していたが、その時、1人のゴルフバッグを肩にかけた男がタクシーに乗り込んだのでその後を尾行し始める。 その様子を物陰から見ていた雪川は、にやりと笑い改札口の方へ向かうが、その姿を偶然見つけたのが信一だった。

信一はすぐさま雪川を尾行し始め、電車に乗って、雪川が逃げ込んだ遊園地「西楽園」までやってくる。

信一は売店で横浜の43-1321に電話をしてもらい、出た母親に根津のことを聞くが、義兄さんは虎谷と出かけたと言うので、オヤジを撃った奴を「西楽園」に追いつめたんだ…と伝える。

しかし、その直後、その受話器はいつの間にか背後に近づいていた雪川に奪い取られてしまう。

雪川はずっと信一が尾行していたことは知っていたのだった。 中丸の事務所に信一を連れて行くと、大松の息子か…、こいつは使えるぜ。雪川、これは良い餌だ、この餌なら大松もきっとしとめられると中丸は愉快そうに笑う。

信一が暴れるので、中丸はコップの水を顔に浴びせ、おとなしくするんだ!と怒鳴りつける。

大松は錦ヶ丘新都市計画の造成地で、自らブルドーザーの上に乗って仕事をしていた。

そこに根津を連れて来たのが金助で、大将のハッスル振りを見てもらいたいんだと言うが、根津は、俺は話すことねえぜと冷静だった。 そんな根津の姿に気づいた大松は、その辺にうろうろされると邪魔だ!おめえも一つやってみねえか!と声をかけてくる。

良い町を作るには基礎が大事だと大松が言うので、会長は、計画通りやるんですか?と根津が確認すると、新都市にはふさわしい町が作られなくては行けねえと思うんだと大松が言うので、根津は頷く。

その時、子分が近づいて来て、中丸から電話があり、話に乗らないと考えがあると言ってきました。とにかく家にお帰りくださいと大松に伝える。 何事かと家に帰った大松は、幹部たちが見守る中、中丸に電話を入れる。

中丸は、ビジネスの話だと切り出すと、あんたの土地と息子さんの命を交換しようじゃねえかと言い、側にいた信一の指を子分たちに痛めさせ、悲鳴を上げさせ声を聞かせる。

その声を聞いた大松は、信一!と電話口に呼びかける。

おめえも、莫大な値をつけた土地をあっさり渡すつもりはないだろうが、そうなると息子はどうなるだろうな?西楽園のオートレース場に2時に1人で来てくれと言って中丸は電話を切る。

電話を切った大松は幹部たちに事情を話す。

どうするつもりだ?と聞かれた大松は、大松会2000人の生活がかかっているんだ、だから全てを犠牲にしてやって来たんだ!そのために娘を殺された。女房子供にも愛想を尽かされた…、それでも我慢して来た! だが俺も血の通った人間だ、これ以上死なせる訳にはいかん!会長の代わりはいくらでもいるが、信一の代わりはいねえ!命が危ないんだ!と大松は血を吐くように言う。

場所はどこだ?と聞かれた大松だが、いえねえ!と言う。

その頃、横浜の自宅に戻って来た根津は、ギンから、信一から電話があり、西楽園に家の人を撃った犯人を追いつめたと言ってましたと言うので、行ってみますと答える。 大松はすぐさま車を自分で運転して出発、その後を金助たちも別の車で追跡する。

息子を案じたギンも根津と一緒の車で西楽園に向かっていた。

金助たちの車は途中でミキサー車に走路を塞がれ進めなくなる。

西楽園 大松が運転席から降りると、遊園地の客にまぎれて待ち構えていた中丸の子分が、仲間にハンカチを振って知らせる。

子供たちでにぎわう飛行塔の横を通って、大松は、無人のオートレース場に2時5分前に到着する。

そんな大松を、レース場の建物の中から雪川がライフルで狙っていた。

水飲み場の所へ来た大松は、突然狙撃され、鏡が割れたので、すぐさま振り向き、雪川の姿を確認すると撃ちかえす。

その後、無人のレース場内に向かい、信一!と呼びかける大松。 その頃、根津とギンも西楽園に到着していた。

根津は、園内をうろついている中丸の子分たちに気づく。

大松の方向に向かって近づいて来た車があり、そこから降り立ったのは手を縛られた信一を連れて来た中丸たちだった。

時間通りに来たようだな?息子の命惜しさに1人で来るとは思わなかったぜと呼びかけた中丸は、土地を全部譲ってくれ!おめえも日本一のギャングだったが、今日は命乞いをしている老いぼれのイヌだ!ハジキを捨てなよ!変な真似したら、あっという間に息子は地獄行きだぜと言う。

やむなく銃を地面に捨てる大松。

そんな大松に行き川は客席にしゃがみ込んでライフルを狙っていたが、そこに近づいていた根津がそれに気づき、間一髪射殺する。

その時、大松も地面にあった拳銃に飛びかかり、あっという間に中丸たちを皆殺しにする。

信一!と呼びかけると、車の陰に隠れていた信一が立ち上がり、お父さん!と呼び返してくる。

そんな信一に近寄った大松は、お前をこんな目に遭わせてすまなかった…と詫びる。

そんな大松に近づいて来た根津も、お義父さん!と呼びかけたので、お義父さんと呼んでくれたね、ありがとう!良く来てくれたと大松はうれしそうに答える。

そこに金助たちも駆けつけて来て、大将!一足遅かったか…と言いながら、これで股、しばらくシャバとはお別れだ…と自ら自首しに行こうとするが、もう身代わりはいらねえぜ!とそれを止めた大松は、根津、立派なニュータウンを作るため、君の力が必要だ、力になってくれ、頼むよと言い聞かす。

そこへギンも駆け寄って来て、お父さん!信一!と呼びかける。

母さん、今度きれいな身体で帰ってきたら、信一と3人きりだ…、それじゃあ、行ってくるよと言い残し、その場を立ち去ろうとしたので、父さん!と信一が再度呼びかける。

車を運転し、1人で桜田門にやって来た大松は、車を降り、目の前にそびえている警視庁の入り口に向かうのだった。
 


 

 

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